証拠価値って解りますか?
パワハラ・モラハラ・いじめが無い、人々が横の関係で繋がる世界を創り、夢実現をサポートする【勇気づけの専門家】自己実現力育成コーチのメタルです。
長年海上保安庁にいて、約3000件の事件事故に関わりました。
船と船の衝突だったり、人が海に落ちる海中転落だったり、行方不明だったり、事件事故の形態はさまざまです。
通報があると、現場へ急行して関係者から事情聴取し、状況調査を始めます。
その時に関係者から話を聴いて、供述調書などにまとめて証拠保全(しょうこほぜん)するのです。
これらが文書や写真・図面として、検察庁へ送られて裁判などの証拠となります。
その時に証拠として、どれだけ価値があるか?つまり、どこまで信用できるか?が証拠価値です。
事情聴取
前述のとおり、事故が起きると船や車で現場へ急行します。
現場に到着すると、その事故の状況確認などのために関係者から事情聴取するんですが、事故が起こったばかりだと現場が混乱しています。
事故を起こしたのはどこの誰なのか?どういう状況でその事故が起こったのか?を知るために目撃者を探します。
陸上と違って、往々にして現場には人が少ないので、関係者捜しに結構苦労することが多いんですよね。
あるときこういうことがありました。
聞いた話
巡視艇の船長をしているとき、とある漁協から沖合で漁船同士の衝突があったと通報がありました。
船は自力航行可能で関係者は無事、両船とも漁港へ帰港中とのこと。
わたしは、部下4名と共に車でその漁港へ急行しました。
漁港へ着くと、たくさんの人だかり。
事故を起こした漁船はまだ到着していない様子でした。
しかし、通報によると事故は多くの漁船が操業している漁場で発生したとのことだったので、さっそく手分けして目撃者捜しを始めました。
「船長!」部下が、わたしを呼ぶ声がしました。
関係者を見つけたようです。
近寄ると1人の漁師さんが、現場の状況を詳しく話しています。
部下がウンウンと頷きながらメモを取っていました。
わたしは、傍らで話を聴いていたのですが、最後に「それって、何時頃見たんですか?」と訪ねると、その漁師さん。
「いや、わしは人から聞いたんやけどな」
部下と二人してずっこけました。
人から聞いた話伝聞は、証拠価値ゼロなんです。
調書化しても、採用されません。
直接目撃した人の話だけが、参考人調書として価値を持ちます。
その参考人調書にしても、他の証拠と照らし合わせてキチンと整合性があるか、辻褄が合っているかを問われます。
これを裏を取るといいます。
関係者の話、現場の状況、時刻、現場の遺留物などがすべて整合性がないと事件として成立しないからです。
このような刑事訴訟法に基づく調査を捜査といいます。
捜査って、刑事ドラマのように派手なものではなく、こういう丹念な調査・理論の積み重ねなんですよね。
疑って疑って残るものが価値を持つ。
事故調査は疑うことから始まると言っても過言じゃありません。
警察官から職務質問を受けた人って「疑われた、気分悪い」って感じる人が多いと思うんですが、警察官はそれが仕事なので許してやってください。
情報は省略・歪曲が起こる
心理学を勉強すると解るんですが、情報は意図する、意図しないに関わらず人から人へ伝えられる間に省略や歪曲が起こります。
言葉が省かれたり、ねじ曲げられたり、するんですよ。
伝言ゲームがよい例でしょう。
だから、昨今問題になっているようなSNS上に流れている話って、証拠価値ゼロだということを前提で聞いた方がいいでしょうね。
前述のように、必ず裏を取る姿勢が大事だと感じています。
まとめ
わたしも人の話をそのまま受け取る方なので、現役時代はよく先輩から叱られました。
全て人の話を疑う必要はないでしょうが、人づての話は鵜呑みにせず、証拠価値ゼロだということを心の片隅に置いておいた方が良いでしょう。
Written by ウミザル式自己実現力育成コーチ メタル
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