海上保安庁に勤めていたときは、当然ながら台風が来るといつも仕事でした。
台風が来ると船は、港に停泊していると岸壁とぶつかって壊れるか、係留している舫い(ロープ)が切れるので、陸に揚げるか沖に停泊するかどちらかの体勢を取ります。
どうしても、その場所に置いておく場合は、いつも以上にロープの数を増やして港で耐えます。
これが、メチャクチャ大変。
「船を逃がす」というんですが、逃げ場を求めて右往左往することもしばしばありました。
錨が引ける
大型船は、沖合に錨を打って耐えるのですが、あまり風が強いと耐えられなくなって錨が引けて流されることもあります。
※走錨(そうびょう)
錨が引けたら、コントロール不能になるので何処かに船が乗り上げたり、他の船と衝突したりする可能性があるのでもう必死です。
当時わたしが乗っていた船も、台風が来たので沖合に逃げて錨を打って耐えることになりました。
巡視船って、最後の方に逃げる場合が多いので、結構風が強くなっていることが多いんです。
その時も、ビュンビュン風が吹いている中、やっと良い場所を見つけて錨を打ちました。
しばらくして、何の用事だったか忘れたのですが、船外へ出る必要があって命綱をつけて外に出たのですが、その時の風速が毎秒20メートル。
もう立っていられません。
這うようにして、作業を済ませて引き返した覚えがあります。
命綱は付けていたものの、飛ばされて何処かに身体をぶつけたり、誤って海に落ちたら結構危険というか、命の保証がないのでメチャクチャ大変だった体験をしました。
人間の予想を超える
何が言いたいかというと、自然は人間のことなんて何とも思ってないってことです。
自然は、人間のことを好きでも嫌いでもない。
吹けば飛ぶような存在なんです。
だから、常に人間の予想を超える動きをするし、人間の想定外のことが起こります。
人間は、自然の前では逃げ惑うしかないんです。
自然は素晴らしいし、わたしも大好きですが、人間の予想を超える存在だということを肝に銘じておいて欲しいですね。
間違っても、台風が発生している時に海岸に近づくことがないようにしてください。
数十回に1回は、それまでの倍以上の高さの波が来ることが解っています。
そんな波にさらわれて、よく沖へ流され亡くなる人も多いんです。
大きな引き波にさらわれたら、まず自力では戻って来られません。
わたしが現役時代にも、同じような場所で同じような形態の事故が後を絶ちませんでした。
これからの季節は、自然と親しむよいシーズンですが、くれぐれも気をつけて。
どれだけ用心しても、用心しすぎることはありませんよ。
Written by メタル(@Metal_mac)
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